【ゼロワン】12・13話、黄金の風

仮面ライダーゼロワン』

第12話「アノ名探偵がやってきた」
監督:柴崎貴行
脚本:三条陸

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第13話「ワタシの仕事は社長秘書」
監督:柴崎貴行
脚本:三条陸

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【感想】

 12月に入り、今年も残すところあとわずか。もういくつ寝るとクリスマスとお正月ということで、12話と13話はゼロワンのパワーアップ回でした。暗殺を極めたドードーマギア改に対抗するため登場した新フォーム・シャイニングホッパー。相手を飛ばした方向に先回りして、追撃を加える戦い方がかっこいい。個人的には、ファイズのアクセルフォームやカブトのクロックアップを思い出しました。ゼロワンのパワーアップなので飛電或人の成長が描かれるのかと思いきや、或人は予想以上に成長していて、そこにシャイニングホッパーのプログライズキーが追いつくため、イズが成長するというお話でした。

 前回の大和田伸也襲撃事件で、警察の立ち入り捜査を受けた飛電インテリジェンス。疑いを晴らすには、ドードーマギアを倒して証拠となるデータを手に入れるしかない。そして、ドードーマギアを倒すためには、新しいプログライズキーを一刻も早く完成させなければならない。プログライズキーの製作中、警察がラボの立ち入り捜査を命じてきた。プログライズキーを完成させるためには、今捜査に入られるとマズイ。断ると余計に怪しまれてしまう。疑いを晴らすには、ドードーマギアを倒して証拠となるデータを手に入れるしかない。ドードーマギアを倒すためには、新しいプログライズキーを・・・という、堂々巡りな状況を救ったのは、先代社長の右腕として活躍していた名探偵ヒューマギア、ワズ・ナゾートク。

 ワズの突き止めた真相、なぜ暗殺ちゃんは何体も出てきたのか。それは、窃盗団に盗まれた祭田ゼットという5体の同型ヒューマギアだったからでした。この「同型機」「兄弟機」が今回のテーマとなっています。

 ワズは先代社長が直々に手がけたイズのプロトタイプ。後継機であるイズのことを妹と呼んだり、ヒューマギアらしからぬ捉えどころのない言動に、イズは不信感を抱きます。第12話のラボでのシーン、イズとワズがそれぞれ対角に位置して、まるで或人を挟んで2人が対立しているような構図。「私を信じてくれますか?」というワズの問いに「俺はワズを信じる」と答え、イズのもとからワズの方へ歩み寄る或人。カットが変わり、カメラの手前には握手をする或人とワズ、奥にはその手をじっと見つめるイズ。或人の新しいパートナーの出現にイズが嫉妬している、そんな印象を受けました。

 その後ワズは、自分のことを「お兄様」と呼んでくれとイズに近づき握手を求めますが、イズはこれに応じません。工場のシーンで、「妹呼ばわりするのはやめてください」と言うイズ。柱で大きく分断された画面によって、2人の間にはまだまだ距離があることが示されます。

 ドードーマギア改との戦闘シーン。完成したプログライズキーを或人に届けて、シャイニングホッパーへの変身を促すイズ。一方、嫌な予感がしたワズはブレイキングマンモスを勧める。ここでも再び、或人を挟んでの対立の構図が生まれています。或人が選んだのはイズ。シャイニングホッパーに変身しますが、プログライズキーがまだ不完全だったため敗北。イズは「社長秘書、失格」と自分を責める。ワズの能力を認め、疑っていたことを詫びるイズ。「いよいよお兄様と呼んでもらえる」と喜ぶワズでしたが、「それはそれ、これはこれ」と断られてしまいます。

 2人の距離が縮まるのは、ワズがイズをかばって自分のメモリーを差し出すシーン。ワズの見る走馬灯、先代社長との記憶を共有し、倒れるワズに「お兄様」と声をかけるイズ。ワズは自分の懐中時計を渡し、イズの手を優しく包み込む。ワズが活動停止すると、まるでワズの黄金の精神が宿ったかのように輝き出すプログライズキー。イズは懐中時計を両手で包み、「私は自分の仕事をやり遂げます」と、決意を胸に前を向く。初めに交わされなかった握手が懐中時計を介して交わされる、趣のあるシーンでした。

 第13話のラストで、懐中時計を見ながら或人にスケジュールを伝えるイズ。ヒューマギアとアナログな懐中時計のミスマッチな組み合わせが、小道具としての懐中時計をより引き立てているように思います。