【ゼロワン】第6話、その台本は必要か

仮面ライダーゼロワン』
第6話「アナタの声を聞きたい」
監督:柴崎貴行
脚本:筧昌也

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【感想】

 「ヒューマギアも台本読みながらアフレコするんかい」と突っ込んでしまった第6話。人工知能なら丸暗記できるだろうと思ったのですが、この話を何度も反芻するうちに、台本を読む行為が実は重要な意味を持っているんじゃないかと思い直しました。おそらく深読みのしすぎなんですけど。

 今回登場するのは、男性・女性はもちろん、動物の鳴き声まで、あらゆる声を演じることができる声優のヒューマギア・セイネと、その所属事務所の社長・多澤。或人、イズ、諌の3人が、人工知能特別法違反の容疑のかかった多澤を調査する場面から始まります。

 人工知能特別法第6条「本人に無許可で酷似した容姿の人工知能搭載人型ロボットを作成および使用してはならない」(第6話だから第6条なのか?)。多澤は3年前に亡くなった自分の娘そっくりにセイネを作り、娘と同じく声優として活動させていた。たとえ家族であっても、同意がなければこれは認められないと諌は言う。或人は3日後のオーディションまでは待つように「ヒューマギアの責任はおれが持つから」と頼み込む。この要求が受け入れられるってことは、諌と或人の間にはそれなりの信頼関係があるってことかな。

 公開オーディション当日。審査員と観客の前で、台本のセリフを読んでいたセイネが突然、「パパ、大好きだよ」と話し始めます。故障したセイネが再起動したときの「パパ、お誕生日おめでとう」というセリフから察するに、セイネはこれまで、多澤の用意したデータの通りに娘を演じていました。それに対して、オーディションでのセリフ「また会おうね、天国で」は、娘の気持ちを理解したセイネが生み出した全く新しいセリフ、アドリブです。このセイネの成長を「台本を見ない」ことでわかりやすく演出するために、あえて台本を持たせたんじゃないかと思いました。こじつけ感がスゴイですが。その後「故障です」と言って、セイネを止めに入る多澤。擬似的にではあるけど、ようやく再会できた娘に「故障です」と言わざるを得ない彼の心情を考えるとあまりにも切ない。舞台が公開オーディションだったのも、セイネの人気ぶりを見せるためと、これだけ大勢の人がいる中で、そのセリフの意味が通じるのはセイネと多澤の2人だけという状況を作るためでしょうか。

 法を犯してまで娘そっくりに作ったヒューマギアが、娘と同じように、声優への夢の途中で亡くなってしまうのは、なんとも悲しい結末でした。

 ラストシーンは或人のギャグを見て真似をするイズ。いつか、或人のギャグセンスを理解して、イズがオリジナルのギャグを生み出すときが来ますように。