【ゼロワン】第31話、夢のマシンの夢

仮面ライダーゼロワン』

第31話「キミの夢に向かって飛べ!」
監督:柴崎貴行
脚本:高橋悠也

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【感想】

 第5話で登場した漫画家の石墨とアシスタントのジーペンが再登場。衛星ゼアと接続できず自分の進むべき道を見失ってしまったジーペンを主軸に、ヒューマギアの夢、ヒューマギアの新しい生き方が描かれた回でした。

 或人の新しい会社『飛電製作所』に石墨からジーペンを動けるようにしてほしいと依頼が入った。「ヒューマギアの気持ちを一番に考える」或人はジーペンを再起動し、「お前はどうしたい?」と問いかけるが、ジーペンの答えは「わかりません」。衛星ゼアと接続できなくなったことにより、ラーニングがうまくいかず、新しいことを考え行動することができなくなってしまったらしい。

 目的もなくさまよい歩くジーペン。そんなジーペンに迅は「自分の意思のままに生きるんだよ」と訴えるが、ジーペンには届かない。このシーンの舞台となっているのはトンネル。ジーペンはそのまま光の方へ歩き、光と影の中間に迅、そしてトンネル内の影の方から滅が迅に声をかける。「人間が支配する世界である限り、ヒューマギアは無力な存在だ」「一人では生きていけない」。画面の手前に映る壊れた電気製品たちが、滅の危惧するヒューマギアの未来を表しているかのようだ。

 バッテリーが減って立ち止まったジーペンが『パヒューマン剣』の看板を見つめる。或人が「お前ならできる」と原稿用紙を差し出す。「ヒューマギアだって夢を見ていいんだよ」と。夢と聞いてジーペンが思い出すのは、漫画を描く石墨の真剣な眼差し。第5話がなければ成し得なかった夢。人とヒューマギア、双方の夢を救った或人。そして、その言葉は唯阿や迅にも響いていく。

 迅のように「お前は、お前の生きたいように生きろ」とただ自立を勧めるだけではなく、目的を見失ったヒューマギアには、或人のようにそっと背中を押してくれる存在が必要だということだろう。滅や唯阿の言っていた「一人では生きていけない」というセリフがここで生きてくる。

 ゼロワンと迅、前半で戦っていた二人が後半で共闘する熱い展開。人間に敵意を向けていた迅が或人の夢に共鳴した。もはやお馴染みとなったボロボロの天津垓。何度見てもおもしろい。

【ゼロワン】第30話、ヒューマギアと人間の境目

仮面ライダーゼロワン』

第30話「やっぱり俺が社長で仮面ライダー
監督:柴崎貴行
脚本:高橋悠也

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【感想】

 ザイアとのお仕事五番勝負に敗れ、飛電を去った或人。社長ではなくなり、変身することも出来なくなったが、シンギュラリティに達したイズの活躍により、再びゼロワンとして立ち上がる。イズから与えられた変身能力で夢を笑う者に立ち向かう或人。タイトルからもわかる通り、第1話を彷彿とさせる新しい第1話という感じでした。

 迅とエイムズの戦闘に割り込む不破諌。これまでの諌なら真っ先に迅へ飛びかかっているところだが、エイムズを抜けて打倒ザイアを掲げた今、その銃口は唯阿へと向けられる。目的は違えど、ザイアという新たな共通の敵を確認する或人と諌。その場所がデイブレイクタウンというのが何とも印象的だ。

 「俺にとって、ヒューマギアと人間の境目なんてない」という或人のセリフ。冒頭、不法投棄されたヒューマギアを見て驚いた女子高生たちが「人かと思った」と去っていくのに対して、そばに駆け寄り保護する或人。シンギュラリティに達することでヒューマギアは人間のように、レイドライザーを使い命令を遂行する人間はヒューマギアのように、ヒューマギアと人間の境界はさらに曖昧なものへとなっていく。

 一方で、全てを自分の道具としてしか見ていない垓も、ある意味ではヒューマギアと人間の境目がないように思える。ヒューマギアと人間を一番区別しているのは、もしかしたら迅や滅などのヒューマギア側なのかもしれない。

【ゼロワン】28・29話、アサルトからランペイジ

仮面ライダーゼロワン』

第28話「オレのラップが世界を変える!」
監督:杉原輝昭
脚本:高橋悠也

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第29話「オレたちの夢は壊れない」
監督:杉原輝昭
脚本:高橋悠也

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【感想】

 自分が渡した道具でボコボコにされる天津垓さん(49日ぶり2回目)。

 飛電vsザイアの「お仕事五番勝負」もいよいよ大詰め。飛電と政府が進めるヒューマギア自治都市構想、その住民投票が最終決戦の場に選ばれた。ザイア側は、ヒューマギア廃絶を訴える政治家・由藤議員を起用。対する飛電も政治家ヒューマギアを用意しようとするが、そんなヒューマギアは開発していない。ヒューマギアが政治家になることは法律で禁じられているとのこと。そこで代わりとなったのが、ラッパーヒューマギアのMCチェケラ。ラップを使った演説で、若年層を中心に支持を得ていく。こういった作品にはめずらしく、結構しっかりラップを作っていておどろいた。これは誰が作ったものなんだろう。そして、いまいちノリきれていないイズがかわいい。

 両陣営とも演説の中に過去の映像を引用している。由藤議員はヒューマギアが暴走する場面。MCチェケラはヒューマギアと人とが通じ合う場面。この映像はどちらも真実で、お互いに自分たちの都合の良い場面だけを切り取って使っている。第28話は、この「映像」や「記憶・メモリー」がキーワードになっているように思います。

 由藤議員が賄賂を受け取る現場を取り押さえたMCチェケラ。生放送の討論番組でその証拠映像を突きつける。しかし、由藤議員は「記憶にございません」と有名なパンチラインで映像を否定。事務所のカメラ映像を見せて、同時刻に別の場所にいたことを主張し、「フェイク映像だ」とMCチェケラを非難する。事実を捻じ曲げられたことに憤るMCチェケラ。垓の挑発に乗り、自分の意思でマギアへと変身。その様子が放送され、飛電の支持率は一気に低下してしまう。前回に引き続き、カメラへのアピールが上手い垓の勝利となりました。

 一方、諌は迅からある映像を見せられる。それは、自分が滅の脱走に手を貸している証拠映像だった。身に覚えのない諌は激しく動揺する。スラッシュライザーを構える迅。いつもならここで戦闘となる場面ですが、諌はそのまま逃走。「ヒューマギアをぶっ潰す」という諌の意思に反する行動で、彼の自我が揺らいでいることが示されます。

 亡のチップを脳に埋め込まれ、ザイアと滅亡迅雷の両方から操られる諌。そんな彼が思い出したのは或人のセリフ「夢を持って前に進めば、笑える未来が待ってる」。街頭では誰一人耳を貸さなかったこのセリフが、諌にはちゃんと届いていた。今まで過去の怒りで戦っていたバルカンが、夢を見つけるため、未来のためにランペイジバルカンへと変身する。そのためかどうかはわかりませんが、初変身は銃弾を受けながらも前へ進む形で描かれていました。

 諌がザイアの洗脳を解く直前に思い出していたのは、「私は道具じゃない」と言い聞かせる唯阿の様子でした。ということは、唯阿を救いたい思いが洗脳を解く切っ掛けになったのかな。回想の後に「〜と生きる道を」みたいなセリフが小さく聞こえたけど、これは誰のセリフだろう。ヒューマギアを憎んでいた諌がイズのピンチに立ち上がるというのも大きな変化だ。

 「お仕事五番勝負」に勝利し、飛電を手に入れたザイア。衛星ゼアを手に入れようと、ラボのロックを開けるためにパスワードギャグを披露する垓が見られるのでしょうか。いや、垓ならそういうことは道具の唯阿にやらせそうだな。それはそれで見てみたい。

【ゼロワン】26・27話、画角を1000%理解した天津垓

仮面ライダーゼロワン』

第26話「ワレら炎の消防隊」
監督:上堀内佳寿也
脚本:高橋悠也

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第27話「ボクは命を諦めない」
監督:上堀内佳寿也
脚本:高橋悠也

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【感想】

 飛電とザイアの「お仕事五番勝負」、第4回戦は消防士対決ということで、とにかく炎がすごかった。火災現場のシーンはもちろんのこと、最後のサウザーvs迅のアクションシーンまで、炎マシマシな回でした。

 火災訓練のビルからより多くの人を救出した方が勝者となるこの対決に挑むのは、消防士の穂村隊長と消防士型ヒューマギアの119之助。穂村隊長との関わりを通じて、119之助が「命を救うこと」の意味を理解し、絶体絶命の要救助者を救い出す。そんな119之助の姿を見て、穂村隊長もヒューマギアに対する意識が変わっていく。或人の夢見た「人とヒューマギアの共生」が描かれます。

「命を救うのが消防士の仕事です」と炎の中に突っ込み救出経路を確保する119之助。命を持たないヒューマギアが自分を犠牲にして人を救う、悲しくも感動的なシーンですが、最初にここだけ見てもヒューマギアがどの程度炎に耐えられるのかわからず、感動が薄れてしまう。そこで鍵となるのがシェスタの存在でしょうか。シェスタが熱で故障してしまう様子を見せておくことでヒューマギアの耐久性がわかり、119之助の決意がより感動的なものになっているのだと思います。

 第25話に引き続き上堀内監督回。やはりカメラがよく動く。カメラだけでなく、背景にいる消防士たちもたえず走り回っている。フレームイン・アウトの演出も多く、画面外の世界をより感じることができました。119之助が暴走する場面。ヒューマギアの危険性を訴えながらゆっくりとカメラに近づく垓。最初、垓に隠れて119之助は見えないが、垓が左にフレームアウトすることで暴走した119之助が映り、マンモスマギアとなってカメラに向かってくる。画面の手前と奥をうまく使った演出がおもしろい。

 毎回、話術で相手を翻弄し、悪意を振りまいて来た垓。今回、その矛先がとうとう唯阿へと向けられる。シンギュラリティの兆候が現れた119之助を暴走させるよう命じられ、それを実行してしまう。そんな悪意の淵から唯阿を救うかのように、唯阿の腕をつかんで垓から遠ざける諌。かっこよかった。消火が終わったあと、諌と同じように建物に飛び込む或人とそれを追う唯阿。或人と119之助の関係を見届けるのが唯阿だったのは重要な気がします。或人と諌と119之助、3人の善意を目の当たりにした唯阿の意思が今後どう変化していくのか気になりますね。

 或人と対立する福添さんも、或人と同じく「人とヒューマギアの共生」の夢を見ていたことに何だか安心した26・27話でした。

【ゼロワン】第25話、俺には夢がない

仮面ライダーゼロワン』

第25話「ボクがヒューマギアを救う」
監督:上堀内佳寿也
脚本:高橋悠也

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【感想】

 メタルクラスタホッパーの暴走が収まり物語も一段落したところで、これまでの物語を振り返る総集編かと思いきや、後半では仮面ライダー迅がバーニングファルコンとなってよみがえり、これからの物語につながる展開を見せる、そんな第25話でした。

 ヒューマギアの開発を担当している博士ヒューマギア・博士ボットが、アークとゼアの歴史を振り返る場面。セリフが多く、人物が会話するだけの画が続きがちなこの場面で、それを感じさせないカメラの動き。冒頭のラボから社長室へ移動するダイナミックなワンカットから始まり、会話する4人の周りをぐるりと一周するカット、回想と回想の間の短いカットも絶えずカメラが動いていて、室内で情報を整理しているだけでも物語が進行している印象を受けました。

 一方、天津垓が野望を語る場面や、或人と不破諌がデイブレイクタウンへ向かう場面などの屋外のシーンでは、その広さを活かした奥行きを感じさせる引きのショットが印象的。

 そして、今回明らかとなったザイアの目的、仮面ライダーの兵器転用。仮面ライダーを最強の兵器として売り出すためにアークとエイムズを作ったという、アナハイム社も真っ青な死の商人ぶり。知らず識らずのうちに利用されていたことに憤る諌。前回、滅が言っていたのはこのことだったのか。さらっととんでも無いことを暴露しちゃったけど、このことをマスコミにリークすれば飛電の大勝利なのでは。久知唐雄が黙っていないでしょう。それとも、ザイアにはマスコミをも封じる手立てがあるのだろうか。

 前半からちょくちょく映っていたバーニングファルコン。まだ出ない、まだ出ないと焦らされて焦らされて、ようやく登場した迅がスーツ着てるーって謎の感動がありました。タイトルのセリフ、博士のものかと思っていたら、迅のものだったんですね。迅の無邪気な部分は残しつつも少し大人に成長している感じも良かったな。なぜ復活したのかはご想像にお任せするということだけど、使っていた短剣のような変身アイテムの名前が「ザイアスラッシュライザー」。これも全てザイアのシナリオ通りなのかな。

 「人とヒューマギアが笑いあえる未来のため」「自分のルールでぶっ潰す」「ヒューマギアの自由のため」など。これまでの情報を整理するのと同時に、各キャラクターの意思が改めて描かれていることも今回の特徴ですね。ただ一人、刃唯阿を除いて。垓に従いつつも、その表情は険しい。唯阿の意思が今後どのように変化していくのか気になるところ。